設立趣意

都市の歴史は文明史そのものである。都市居住がはじまって、すでに数千年を経ているが、われわれ人類の生活や活動の多くは、いまなお都市を基盤に存立している。21世紀に入り、自然災害はもとより、人類がみずから招いた人為的リスクに晒されることが常態と化し、都市が過去に経験したことのない類いの危機に瀕するようになった。こうして、都市の歴史を辿ることは、人類の居住履歴を批判的かつ冷静に再検証することにほかならない。いま求められているのは、近現代化の過程の中に見失われた、世界各地における伝統都市の基層を再発見することであり、そこに横たわる豊かな歴史の鉱脈を掘り起こし、その固有の価値を、現代的視点から見直すことではないか。混迷する時代の中で、大地に根ざし、個性溢れる地域の生活とその歴史を確かな足がかりとしつつ、最適都市への展望を切り拓くことが、迂遠ではあるがわれわれの戦略となる。

この列島において、都市史をめぐる先駆的研究は、すでに戦前期から断片的には見られたが、質・量をともなう研究成果が世に問われるようになるのは、1960年代末以降のことである。とりわけ1970年代後半から1980年代前半の時期、都市史研究はすでに多様な学際性を伴いつつ、一挙に高い水準へと駆け上がった。その後、1990年代から今日にかけて、多様な学的分野において内容豊かな成果が厖大に蓄積されてきた。いま、これまで多分野にわたる学問領域において、それぞれ独自に推進されてきた都市史研究・都市史学の潮流が合流しあう場を設定し、この列島における都市史学の、学際的で開かれた堅固なプラットフォームとして構築し、これをグローバル規模の研究ネットワークの中に位置づけること、これこそ、都市史学会設立の趣旨である。

本学会は、人間居住の基礎学・総合学としての都市史学が、都市はもとより、集落や自然などを含む社会や空間の一定の拡がりをも対象とし、政治・社会・経済・文化・思想・文学・空間・景観・考古・地質など、さまざまな学的分野の共同により、豊穣かつ独創的な成果を継続的に生み出し、併せて相互錬磨のフォーラムとして成熟することを企図したい。

2013年6月